
こんにちはソムリエ田中です。アイスワインの定義とは何だろう‥という疑問について全般的に解説をします。
私もソムリエの勉強をはじめた当初、もっとも疑問点の多かったのが「奇跡のワイン」とも呼ばれるアイスワインです。
- アイスワインとは日本でも作られているもの‥?
- アイスワイン・貴腐ワイン・デザートワインの違いとは‥?
などの疑問点について、アイスワインの定義をもとに解消できればと思います。
アイスワインとは
アイスワインとは氷点下7℃以下という気温条件のもとブドウを凍ったまま収穫し、凍った水分を残して「凍らない高糖度エキス分」だけを取り出しアルコール発酵させて作る極甘口ワインです。
また正式に「アイスワイン」を呼称できるのは国際商標登録されたオーストリア・カナダ・ドイツの3ヵ国で一定基準に基づき生産された場合のみ。それ以外の地域では同じ製法で生産しても「アイスワイン」を呼称することはできません。
また気候条件が伴わない地域では人工的にブドウを凍らせた「人工アイスワイン」が作られており、アイスワイン風として販売されている場合もあります。
この「人工アイスワイン」の味わいは正式呼称のアイスワインとほぼ変わらない品質ですが、アイスワインを名乗れずラベル内にも記載できないため安めの価格で販売される場合が多くなっています。
したがってアイスワイン製法で製造する生産地は世界各国にありますが、オーストリア・カナダ・ドイツでは「アイスワイン」それ以外の地域では「アイスワイン風」という呼称になります。
アイスワインと貴腐ワインの違い
アイスワインと貴腐ワインの違いについては、まず「デザートワイン」を知るのが早いです。
デザートワインの種類
- 貴腐ワイン
貴腐菌(ボトリティスシネレア)が付着することでブドウ内の水分が抜け、その作用により糖度が上がりアプリコットなどの香り(貴腐香)が与える作り方のワイン。代表的なものにフランスソーテルヌ地方のシャトーディケムやハンガリー地方のトカイなどがある。 - アイスワイン
上記の通り。 - ストローワイン
干しブドウから作られるデザートワイン。代表的なワインにフランスではヴァン・ドゥ・パイユ(Vin de Paille)や北イタリアではヴィン・サント(Vin Santo)などがある。 - 酒精強化ワイン
醸造工程でアルコールを添加して作られる高アルコール・高糖度のデザートワイン。代表的なものにシェリー酒、ポートワイン、マディラ酒やフランスのヴァン・ドゥー・ナチュレル(Vin Doux Naturel)などがある。
貴腐ワイン・アイスワインとも、いずれもデザートワインのジャンルに含まれます。
この一覧で示したようにアイスワインと貴腐ワインの違いには「作り方」があり、菌の作用によるものか、気候の作用によるものかといったブドウ栽培時の根本的な部分から異なります。
したがってアイスワインとソーテルヌの違いもこれと同じで、ソーテルヌが貴腐ワインのカテゴリーに当たるためアイスワインとは作り方の異なるデザートワインということになります。
アイスワインのブドウ品種
アイスワインに使用されるブドウ品種には次のものがあります。
- ヴィダル
- リースリング
- ゲヴェルツトラミネール
- ピノノワール
- カベルネソーヴィニヨン
- カベルネフラン
- シラー
- 甲州
- ナイアガラ‥など
正式な自然栽培で凍らせて作るアイスワインには寒さに強いブドウ品種が必須で、とくにオーストリア、カナダ、ドイツなどアイスワイン呼称が国際商標登録された国では寒冷気候に適したヴィダル、リースリングなどがおもに用いられます。
それ以外の気候条件が整う国でも、同じようなブドウ品種を使ってアイスワイン風が醸造されます。気候条件の整わない国では寒さに強くないブドウ品種も使用され、人工的にブドウを凍らせて作る人工アイスワインが生産されています。
またアイスワインに使用される原料のブドウ品種というのは、発泡酒・白・ロゼ・赤ワインといった一般的によく見る「スティルワイン」と同じ品種が用いられるのが特徴です。
貴腐ワインには貴腐菌が付着しやすい白ブドウ品種セミヨンを用いられますが、アイスワインは貴腐ワインのように白のみではなく「白赤ともに楽しめる」というのも大きな特徴の1つです。
ちなみに日本では北海道の一部地域で、自然栽培のアイスワインが生産された時期もありました。しかし寒さによりブドウ樹が弱ってしまい生産が困難という理由から今では造られていません。
現在の日本では甲州やナイアガラといったブドウ品種を人工的に凍らせて作る「アイスワイン風」の生産方法が用いられており、長野県以東などのワイナリーでおもに製造されています。
アイスワインの選び方
アイスワインの選び方2つのポイント
- オーストリア・カナダ・ドイツといった国際商標登録のされている国で、一定の基準をクリアして生産されたアイスワインであればラベルに「Eiswein」と表記されています。
- しかしそれ以外の国で生産されたアイスワイン製法で生産された場合は「Eiswein」と表記できないため、醸造工程までしっかりとチェックして選ぶことが重要です。

アイスワインの選び方として、もっとも重要になるポイントが「アイスワイン製法で造られたワインを選ぶこと」になります。よくワイン通販ショップなどで紛らわしい表現を見かけるので注意が必要です。
アイスワインと甘口白ワインでは、製法も違いますが味わいも全く異なります。
アイスワイン製法というのは「凍った状態で搾汁する」という工程が含まれていることが重要で、ブドウ果実を凍らせることによって初めて高糖度でまろやかな口当たりのアイスワインが完成します。
したがって国際商標登録で認められた「Eiswein」という表記のあるオーストリア・カナダ・ドイツ3ヵ国以外の国でも、アイスワイン製法で生産されていればただ表記ができないだけで同じようにアイスワインを楽しめます。
アイスワインに適したグラス
アイスワインを楽しむために適したグラスは「リーデル・ヴェリタス」です。
基本的にどんなグラスでも構いませんが、よりアイスワインを美味しく感じるためには小ぶりで「ちょっとだけ入る」という大きさのグラスがもっとも向いていると私は思います。
さらに脚付きであるとアイスワインの温度変化を限りなく最小に抑えられるため、もっとも美味しいと感じる飲み頃の冷たい状態を維持しながらアイスワインを楽しむことができます。
きっと最高に美味しくアイスワインを楽しむことができます。
希少なワインなので、とっておきのアイスワイン用グラスを1つ購入しておくのもいいかもしれません。
アイスワインにおすすめグラス
まとめ

アイスワインとは?をはじめ定義全般および関連する疑問解消にむけた内容をご紹介してきました。
アイスワインというのは「唯一無二」なジャンルです。
一般的な甘口白ワインとは比較にならないほど濃厚な極甘口で、貴腐ワインよりも酸味がありスッキリとした切れのよいブドウ本来の味わいをアイスワインでは楽しめます。
ワインが苦手という場合でも、アイスワインは別格に感じると思います。
アイスワインを試すとあまりの美味しさできっと虜になると思うので、一度はぜひ試してみて欲しいカテゴリーであるとソムリエとして強くおすすめします。

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