
ソムリエ田中です。今回は「ワインの澱(沈殿物)」についていろいろとご解説しようと思います。
ワインの澱といってもあまり見かける機会が少ないもので、今までに”まだ見たことがない”という人も結構いらっしゃるかと思います。
- ワインの澱とは?
- ワインの澱を構成している成分は?
- ワインの澱を取り除くには?
などについてご紹介していきます。
①ワインの澱とは?

ワインの澱とは、熟成させることで不要な要素が固形化したものです。
もともとワインは生産された時点で「うまみ」「えぐみ」が交じり合っており、液体なので目には見えず分離のさせようがありません。その液体の状態で交じり合っている味の要素を、熟成させることによって固形化させ溜まったものがワインの澱というものです。
澱が溜まるほど液体中のうまみが際立って、澱を取り除くことで残ったワインはよりクリアでうまみだけが感じられる味を楽しむことができます。
したがってワインに澱が発生するのは、おもに長期熟成させたヴィンテージワイン。
ただしどんなワインでも熟成させれば澱が発生するかといえば違って、ボージョレヌーボーなどの軽い(早飲み)ワインなどはもともと味が軽くて澱となり得るだけの成分(タンニンなど)が少ないため発生することはありません。
②ワインの澱はどんな主成分で出来ている?

ワインの澱を構成している主成分は、おもに「タンニン(渋み)」です。
よく若いワインは渋くて酸味があるといわれますが、それはまだ固形物の澱として分離されていないため飲みづらい味となっているからです。
よく表現されるのが「味に角がある」という状態。
口身入れた瞬間にイヤと感じる味の要素(苦み・渋み・酸味)が液体中に溶け込んでいるため、トゲトゲとした荒々しい味を感じてしまうのが若いワインの特徴です。
ほかにも様々な成分が澱となって固形化していますが、そのほとんどはタンニン(渋み)の成分で構成されています。
③ワインの澱引き

ワインの澱を取り除く作業を「澱引き」といいます。
この澱引きの作業はじつに簡単で”澱を残してほかの容器に詰め替える”ことで完了します。
ここで使われるのが”デキャンタ”と呼ばれる、フラスコを大きくしたような道具です。
デキャンタに移し替える澱引き作業を「デキャンタージュ」「デキャンティング」と呼び、容器に移し替えるとともにたっぷりの空気に触れさせてワインの味や香りを”開かせる”という役目も担っています。
ワインを移し替えて澱引きをするときは、まずボトルを1日前からパニエに寝かせておくか、立てて澱を沈ませる作業を行います。
いよいよ抜栓するときは、キャップシールを全て除去します。
その後はワインの首部分に下から光を当てて、透かして見ながら澱が入って行かないギリギリのところまで移し替えればOKです。このときに大事なのはボトルを「揺らさないこと」です。
なるべくボトルを一定の角度のまま保ちながら、静かに移し替えていきます。
この作業を「デキャンタ―ジュ」といいますが、やり方などはこちらの記事で詳しく解説しています。➝【ソムリエ監修】おすすめのワインデキャンタや用途・使い方などを徹底解説!
④ワインの澱はフィルターでも取れる?

ワインの澱引きをするときに、慣れないうちはフィルターを使うのもおすすめです。
コーヒーを淹てるときに使うドリッパーとフィルターを利用して、固形化された澱がなるべく小さくならないよう静かに別容器へ移し替えてきます。(あまり澱が細かくなりすぎるとフィルターによっては通ってしまいます)
この方法であれば移し替える作業がとても楽で、誰でも失敗することなくワインの澱引き作業を完了することができます。
⑤ワインの澱はかならず除去したほうがいい?

ワインの澱を除去するのは、クリアでおいしい部分だけを楽しむためです。
したがってせっかく熟成によっておいしいワインとなっているため、できれば澱を除去しておいしい部分だけを楽しむことが望ましいといえます。
しかし澱引き作業で「澱とともに残ったワイン」がもったいなくて、はじめから澱引きをせずワインを飲んでしまう方もいらっしゃいます。また残った澱が混じったワインをあえて飲む方もいます。
澱というのは、そもそもワインに含まれてい成分が固形化したもの。
したがって体にとって害はないため、澱をすべて飲んでしまっても構いません。
ときには澱の混じったワインが好きという方もいらっしゃるほどで、強い渋みを感じる澱の混じったワインをあえて最後の楽しみとして取っておくといった飲み方もあります。
しかしせっかく「美味しい部分」だけが残っているので、できれば澱引きをして除去してから熟成させた長い年月まで趣として楽しむという飲み方の方がおすすめといえます。
⑥ワインの澱が料理の味に与える影響は?

ワインの澱は飲んでも構いませんが、繊細な味の料理になるほど影響を及ぼします。
たとえば「赤ワインには肉料理」といわれていますが、サッとレアに焼いたステーキなどの味は大きく変わってしまいます。その逆にビーフシチューなど味の濃い料理はそれほど大きな影響を及ぼしません。
しかし澱となって分離されることでせっかく美味しい部分が残っているので、わざわざ澱と料理の相性を考えることもないかなというのが私の意見です。
⑦ワインの澱を利用して知識を深める

ワインの澱というのはヴィンテージワインなどでない限りお目に掛かれませんので、もし出会う機会があれば「あえて飲んでみる」というのも勉強になるものです。
たとえば”澱が混じるとどれくらい味が落ちるのか?””どれだけ不要なものが取れているのか?”など、澱の味やとり除く意味などを身を持って知ることができるので良い勉強にもなります。
したがってワインの知識を深めることができますので、あえて澱を飲んでみるというのも一度くらいは経験しておかれるといいかもしれません。
⑧澱って白ワインでも出来る?

ワインの澱は基本的な成分がタンニン(渋み)なので、ぶどうの皮と一緒に絞って作る赤ワインでほぼ発生しますが白ワインでも澱ができることはあります。
白ワインの中でも長期熟成タイプのものであれば、少しだけ含まれたタンニンやほかの不要な成分によって澱が発生する場合があります。早飲みタイプの白ワインではまず澱が発生することはありません。
とくに甘口白ワインの澱というのは赤ワインのような黒色ではなく、水晶のように透明でキラキラとした砂糖の結晶とも思える印象の澱が発生します。この場合は澱というよりも「糖分の結晶」といったほうが正解になります。

まとめ

ワインの澱についてあれこれとご紹介してきました。ここまでをまとめます。
- ワインの澱とは?
➝液体中の不要な部分が固形化したもの。 - ワインの澱はどんな主成分で出来ている?
➝おもにタンニン(渋み)が凝固したもの。 - ワインの澱引き
➝澱が入らないよう別の容器に移し替える。 - ワインの澱はフィルターでも取れる?
➝初心者の澱引きが簡単になる。 - ワインの澱はかならず除去したほうがいい?
➝飲んでも害はないけど味はよくない。 - ワインの澱が料理の味に与える影響は?
➝とくに繊細な料理の味を変えてしまう。 - ワインの澱を利用して知識を深める
➝またとない勉強になる。 - 澱って白ワインでも出来る?
➝ヴィンテージワインなどは澱が発生する場合がある。
これで少しは「ワインの澱」について詳しく分かったかなと思います。
ワインの澱はおもにヴィンテージワインのような年代物にあるものですが、中には「味の濃い赤ワイン」であれば3年以上くらい経つと澱が発生する場合もあります。
したがってワインを購入したら、まずボトルの底部分を光にさらして澱を確認してみてください。
もし澱が透けて見えるようであれば抜栓する1日前にボトルを立たせておいて澱を沈め、飲む直前に澱引きをすることでよりおいしく飲むことができます。
もし分からないことがあれば、ぜひ問い合わせへ気軽にご相談ください。

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